研究課題
木材の破壊条件として従来の線形破壊力学に基づく方法とは異なり、有限な小領域における平均応力が破壊のクライテリオンを満たしたときに破壊が始まるとする増田の提案する有限小領域破壊理論の応用例として、ボルト接合における木材の破壊を検討した。ボルトから材端までの距離が短い場合は繊維に直角方向の引張応力で破壊に至るが、長い場合はせん断応力で破壊に至ることが、FEMによる解析とSPF材を用いた実験結果から明らかとなった(増田)。せん断における応力-ひずみ曲線が線形ではなく非線形であることを考慮した解析を行うことが今後に残された課題である。横引張に対する応力-ひずみ曲線および破壊じん性に関しては(三橋)が検討中であるが、せん断の応力-ひずみ曲線については(吉原、太田)がねじり試験により検討し、(増田)は顕微ビデオ及び画像相関法を用いて検討中である。現時点での実験結果では弾塑性というよりは、折線的な非線形である。今後さらに実験を進め確かめる必要がある。ボルト接合における木材の破壊をいわゆる破壊力学を用いて(祖父江)は解析することを試み、ボルト孔のような切欠きのない問題に対して等価切欠きの長さをいくらにすべきか基礎実験及びFEM解析を行っている。横引張応力とせん断応力が同時に作用する場合のひずみエネルギ開放率のクライテリオンとしては(佐藤清)も(鈴木)もいずれも2乗の和の形が実験式とよく適合するという結果が得られた。AEと破壊じん性の関係は破壊のモードにより異なることを(佐藤敬一)は実験的に明らかにしつつある。また、集成材の破壊予測にRBDの適用を(三橋)は試み、引張側2層のラミナの曲げ応力度がそのラミナのMORに達したとき破壊に至るとする仮定では、実験結果との適合性がよくないことを明らかにした。
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