研究課題
平成6年度研究業績の概要は以下のようである。(1)生物発光を示す海産動物の1種オワンクラゲの発光系として発光タンパクが知られているが、その発光基質セレンテラジンについての発光機構研究の1つとして、発光環境と発光強度の関わりについて検討した(磯部)。これと構造類似のウミホタルルシフェリン類縁体について、特にスーパーオキシドアニオンとの反応速度論的研究も行った(藤森)。更にこれ等セレンテラジンの基本骨格であるジヒドロイミダゾピラジノンについて系統的に検討を進めている(大橋)。これらの研究は相互に関連しあい、生物発光の基質の構造と発光効率について考察を進めると共に、新しい発光系の開発をも目指している。(2)トビイカの生物発光に関わるルシフェリンの構造は明かでなく、またオキアミの発光基質ルシフェリンはタンパク質と結合しているが、夜になるとルシフェリンとなって発光する。これ等構造未知のルシフェリンの構造研究を進めると共に、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による発光機構の研究を行っている(磯部・中村)。(3)鍵中間体であるジオキセタンの構造と発光効率の関連の研究を進めるため、ロフィンペルオキシドの種々の置換体を合成し、CIEEL機構の重要性について検討した(木村)。また熱的に比較的安定なジオキセタンを合成し、その分子内の歪と発光強度の関係を検討した(松本)。同時にジオキセタンの分解についてビラジカルを経る機構の理論的解析を進めた(平野)。(4)酵素の関与しない発光反応として、カリックスアレーンの電気化学的発光に対する構造の影響(辻本)及びフェノチアジン誘導体の還元剤を用いての発光を検討し、発光スペクトルの測定に成功した(前田)。(5)平成6年12月には本研究の公開研究発表会を行い、盛会であった。また班員相互の研究協力も盛んに行われた。
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