研究分担者 |
野口 宗憲 富山大学, 理学部, 助教授 (30019004)
小川 和男 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (30132731)
馬場 昭次 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (80011691)
高橋 景一 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (40011481)
毛利 秀雄 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 所長 (70012268)
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研究概要 |
本研究では鞭毛・繊毛運動の発現と制御の機構に関して多角的な研究が行われた.鞭毛・繊毛運動は,微小管上の蛋白質複合体ダイニンが隣接する微小管に対して滑り力を発生することに基づく.本研究ではまずダイニン内腕・外腕の構造に関して,多種生物間で外腕中の重鎖の数を比較し,原生動物では3本,その他の生物では必ず2本存在することを明らかにした.また,3種の中間鎖の一次構造を決定し,中間鎖のある種のものにはヌクレチオド代謝にかかわる複数の酵素活性があることを見いだしたほか,突然変異株の解析から内腕の中間鎖としてアクチンが結合していることの決定的証拠を得た.また,ダイニンの滑り力発生が重鎖内の複数部位におけるATP結合よって制御されていることを示す知見を得た.さらに,鞭毛軸糸が特殊な条件下において行うナノメートルスケールの微小振動現象を解析し,鞭毛・繊毛運動の発生にはダイニン自身が持つ振動運動を行う性質が重要であることを示した.次に運動の制御機構に関して,軸糸の運動が蛋白質燐酸化とカルシウムイオンによって制御される機構を研究した.まず,哺乳類の精子鞭毛では蛋白質燐酸化による制御部位が鞭毛基部に局在するという興味深い結果を得た.またゾウリムシ繊毛では,サイクリックAMP依存性の燐酸化反応によって繊毛打のカルシウムイオン感受性が変化することを明らかにした.カルシウムイオンは軸糸内の滑り力発生を調節するが,無負荷時の滑り速度そのものには影響を与えないことが明らかになった.これにより,カルシウムイオンは力発生を行うダイニンの数を制御している可能性が示唆される.カルシウムと蛋白質燐酸化がダイニンの活性を調節する分子機構の解明が今後の重要な課題である.
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