研究分担者 |
三室 守 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (40142004)
渡辺 正勝 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (40124226)
白岩 善博 新潟大学, 理学部, 助教授 (40126420)
川井 浩史 神戸大学, 内海域機能教育研究センター, 教授 (30161269)
堀口 健雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20212201)
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研究概要 |
クロミスタを構成する生物の系統と分類について,今年度は特に葉緑体をもたない無色の鞭毛虫のビコソエカ類に注目して研究を行った。Cafeteria属について,微細構造と食作用の様式を詳細に観察した結果,鞭毛装置の構造は葉緑体をもつストラメノパイルの黄金色藻のそれと高い相同性を示すこと,また食作用に関わる微小管も混合栄養の黄金色藻と相同であることが明らかになった。ビコソエカ類は葉緑体を獲得する以前のストラメノパイルであると考えられるので,食作用に関わる装置は黄色植物が分化する以前に獲得されたもので,黄金色藻にみられるそれは原始的な形質が残存しているものであることが推定された。分子系統の分野では,5SrRNA遺伝子と他のrRNA遺伝子の配列を指標に検討を行った。その結果,褐藻,黄金色藻,黄緑色藻,ラフィド藻,真正眼点藻,ハプト藻,渦鞭毛藻,ユ-グレナ藻で5SrRNAが他のrRNAとリンクして存在していることが確認された。このリンクは粘菌などの初期の真核生物にもみられる。このことは,ストラメノパイル生物群では,初期の真核生物の遺伝子配列が変化せずに残されている可能性を示唆している。渦鞭毛藻では,Peridinium foliaceum,P.balticum,Gymnodinium quadrilobatum,Dinothrix paradoxaの眼点構造の観察と他の渦鞭毛藻との比較から,これらの眼点がペリディニンをもつ渦鞭毛藻の葉緑体が特殊化することで形成されたこと,したがって,これらの渦鞭毛藻がもつフコキサンチンタイプの葉緑体は眼点とは別にクロミスタ生物が細胞内共生によって獲得されたことがほぼ明らかにされた。このほか,ハプト藻のEmiliania huxleyiを用いた光合成と石灰化の関連,フコキサンチン-ペリディニン-クロロフィル複合体の微細構造などについて多数の知見を得た。
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