研究概要 |
平成7年1月から2月にかけて、父島各地の磯で徒手による採集、亜潮間帯でスク-バ使用による採集、浅海48地点でドレッジによる採集を行った。得られた標本資料は主として魚類、等脚甲殻類および十脚甲殻類、貝類および頭足類、多毛環虫類、蛇尾類および海星類である。 現在、各研究機関において分類学的研究が進められているが、等脚甲殻類に関しては、ウミナナフシ亜目のCyathura、有扇亜目のCirolana,Eurydice、ミズムシ亜目のMicroceberus,Microcharon,Alloniscus,Littorophioscia,Nagurusなど諸属の生息が確認された。十脚甲殻類では、特にカニ類において分類学的および生物地理学的に興味ある種が採集され、新種の記載だけでなく、採集された標本を全体として記録することを準備中である。軟体動物は、父島周辺に砂泥地が多いことからドレッジにより二枚貝類が多数採集され、現在研究が進められている。また、多数採集されたヒザラガイ類は12種に同定され、うち4種が新種と考えられる。12種の分布域は、小笠原だけで記録されるものが上記4新種を含む5種、南西諸島、八丈島および小笠原に分布するものが2種、さらに本州まで分布するものが5種であった。浅海で採集された頭足類はヒョウモンダコ、アナダコ、ワモンダコの3種で、小笠原でヒョウモンダコの生息が確認されたことは生物地理学上興味深い。棘皮動物のヒトデ・クモヒトデ類は約30個体が採集された。本調査で採集された標本に基づく限り、小笠原諸島の海産無脊椎動物相は比較的単調であって、海洋島の特性を示しているということができる。
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