研究課題/領域番号 |
06304021
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舘 鄰 東京大学, 農学部, 教授 (30011711)
|
研究分担者 |
河本 馨 東京大学, 農学部, 教授 (30011894)
高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
佐藤 英明 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (80093243)
北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
内海 恭三 京都大学, 農学部, 教授 (90033266)
|
キーワード | c-kit / cyclin / Sry / WAP / fos |
研究概要 |
本研究の目的は、現在、わが国で活発な研究が行われている、生殖巣分化制御遺伝子群の中で、研究の進展が特に著しいものを中心に、応用動物科学の立場から研究を推進することにあった。この目的のもとに以下の研究を行った。1)シバヤギを反芻類家畜のモデルとして研究を推進し、性決定遺伝子であるSRY遺伝子のプロモーター部、3'側非翻訳部を含む4.9KBのゲノムDNA全域の構造決定を完了した(舘、東條、田中、山内)。2)マウスセルトリ細胞起源の培養細胞株TM-4に、ヒトおよびマウスのSRY遺伝子を導入し、SRYカスケード下流の遺伝子発現に対する影響の解析を行った結果、マウスSryは、ミュラー管抑制因子(MIS)遺伝子、および、P450Aromatase遺伝子の発現を促進する一方、ヒトSRYはMIS遺伝子発現を抑制する傾向のあることを示唆する結果が得られた(舘、東條、田中、山内)。3)ヒトの性分化異常症において、興味深い症例について性決定支配遺伝子、精子形成支配遺伝子について研究をすすめた。また、Y染色体上の新規遺伝子として、成長に関与する遺伝子の存在を示唆する結果が得られ、詳細な解析を継続している(中堀)。4)Y染色体特異的遺伝子を用いた家畜初期胚の性判別技術の改良と開発に関して、従来の実用レベルの研究をさらに推進している(内海)。5)ウシ胎児精巣cDNAライブラリーから取り出したSRYは、マウスSRYと同様、円形であるらしいことが推測された。さらにウシSRY遺伝子の構造解析を継続している(内海)。6)マウス突然変異系統W^fやW^<sh>、の発現機構について重要な研究の進展が見られた。特に、家畜や野性動物のW遺伝子のmutantと思われるものとの、表現型の比較が、今後興味深いものと思われる(北村)。7)ヤギおよびヒツジのc-kit遺伝子の、細胞内ドメインにはヤギ・ヒツジ属に特異的なalanineの単一アミノ酸残基の挿入があることが明らかになった。優性黒眼白色形質との関連はつけることができなかったが、今後機能解析を行い、応用動物科学分野での利用を目指す計画である(舘、東條、田中)。8)fos、及び、fes遺伝子の卵胞顆粒膜細胞における発現機構解明と、卵胞閉鎖予防技術の開発に関し多くの興味深い成果が得られた(佐藤)。9)黄体については、新成黄体と退化黄体の発現RNAの差を取り、アポプトーシスに関わると思われる遺伝子がクローニングされた。その同定と、機能の解明に向けた研究を継続中である(高橋)。10)卵細胞形成過程におけるcyclinの発現調節機構の解明に関する研究成果が得られた。特にcdcタンパク質、cyclin B1,B2などの細胞分裂、減数分裂における機能解明が、応用面から今後の重要な課題である(河本)。11)WAPプロモーターの乳腺特異性が弱いことが確認された、このプロモーターの実用上の特性について、重要な知識の進歩が得られた。また、機能の不明なWAPタンパク質を高発現しているトランスジェニックマウスの作出に成功した(東條、舘)。12)家畜胚へのトランスジーンの導入効率の改善を図る試みの一つとして、エキソニュクレアーゼとPCRを併用したトランスジェニック胚の選別法の開発を試み、従来の報告されている予備的な成績を、著しく改良することができ、実用化に近づけることができた(東條、舘)。
|