研究分担者 |
猪俣 賢一郎 東邦大学, 医学部, 教授 (20116388)
倉島 知恵理 都立老人総合研究所, 主任研究員 (40161731)
野村 慎太郎 大阪大学, 医学部, 助教授 (80159087)
高木 亨 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (20124696)
片桐 正隆 日本歯科大学新潟, 歯学部, 教授 (10060435)
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研究概要 |
本年度は次の二つのテーマに重点をあて研究した。 1)<目的>:歯胚及び良性歯原性腫瘍におけるエナメル基質蛋白及び基底膜成分の局在を免疫組織化学的に検索することにより,腫瘍細胞の機能分化の程度のついて検討した。<結果及び考察>:エナメル基質蛋白(アメロジェニン),基底膜物質の免疫組織化学的検索結果から,歯胚の硬組織形成には,これらの蛋白が重要な役割を演じていることが示唆された。腺様歯原性腫瘍は,歯乳頭細胞の欠如にも関わらず硬組織の形成を認めた。従って,腺様歯原性腫瘍の上皮細胞は,上皮-間葉相互作用無しにエナメル基質形成能を有するまで機能分化している可能性が示唆された。しかし,間葉系組織が存在しないことから正常のエナメル質構造を示さないことが考えられた。エナメル上皮線維歯牙腫及び歯牙腫の構成細胞は,歯胚にかなり類似した程度まで分化を示していると考えられた。エナメル上皮腫は形態的にはエナメル芽細胞に類似し,エナメル上皮線維腫は更に歯乳頭様の間葉組織を持っているが,機能的にはエナメル基質蛋白合成能を有するまでは分化していない細胞であることが示唆された。 2)<目的>:今回我々はマウス下顎頭軟骨を用いて,I,II,X型コラーゲン遺伝子の発現と局在をin situ hybridization法(ISH)により観察し,成長,加齢に伴う変化を検討した。<結果と考察>:I型コラーゲンのシグナルは,1週齢では下顎頭表層から成熟細胞層と肥大細胞層の境界付近までの細胞に強く見られたが,成長に伴い表層付近では明瞭なシグナルを示す細胞はは減少した.II型コラーゲンでは,成熟細胞層に強いシグナルを認め,成長に伴いシグナルを持つ細胞は減少した。X型コラーゲンのシグナルを持つ細胞も肥大細胞層菲薄化とともに減少し,内軟骨性骨形成のほぼ終了する9週齢になるとシグナルは認められなくなった。以上のように,下顎頭軟骨では成熟に向かうに従い,各型コラーゲン遺伝子を発現する細胞の部位的,量的な変化が生じることが明らかになった。中でもX型コラーゲンの発現は,内軟骨性骨形成と密接な関連性を持つことが示唆された。
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