研究分担者 |
猪俣 賢一郎 東邦大学, 医学部, 教授 (20116388)
倉島 知恵理 都立老人総合研究所, 主任研究員 (40161731)
野村 慎太郎 大阪大学, 医学部, 助教授 (80159087)
高木 亨 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (20124696)
堤 啓 大阪医科大学, 検査部, 教授 (10032864)
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研究概要 |
第一に歯胚及び良性歯原性腫瘍におけるエナメル基質蛋白(Amelogenin)及び基底膜成分の局在を免疫組織化学的に検索することにより,腫瘍細胞の機能分化の程度について検討した。エナメル基質蛋白(Amelogenin),基質膜物質の免疫組織化学的検索結果から,歯胚の硬組織形成には,これらの蛋白が重要な役割を演じていることが示唆された。エナメル上皮腫は形態的にはエナメル芽細胞に類似し,エナメル上皮線維腫はさらに歯乳頭様の間葉組織を持っているが,機能的にはエナメル基質蛋白合成能を有するまでは分化していない細胞であることが示唆された。 第二に免疫組織化学的手法を用いエナメル上皮腫,悪性エナメル上皮腫における増殖細胞核抗原(PCNA)の分布,2種類の癌遺伝子産物(c-myc蛋白,ras蛋白),癌抑制遺伝子産物(p53)蛋白の発現と比較検討した。エナメル上皮腫再発時における増殖能の増加が示された。悪性エナメル上皮腫のPCNA陽性率はエナメル上皮腫に比し有意に高値を示した。エナメル上皮腫において,c-myc蛋白は細胞周期に依存して細胞内局在を変化させ,さらに細胞増殖に関与することが示唆された。一方,ras蛋白は細胞増殖への直接的な関与は無く,より分化した腫瘍細胞に局在することが示された。p53エナメル上皮腫2例,PCNA陽性率で高値を示したエナメル上皮腫2例でその発現を認め,これらの症例におけるp53蛋白の異常が示唆された。以上の結果から,エナメル上皮腫,悪性エナメル上皮腫において,本検索に用いた蛋白の量的変化あるいは局在分布が腫瘍組織の分化,増殖,あるいは悪性能を反映していると考えられた。 歯原性腫瘍及びラット切歯に於けるAmelogenin mRNAの出現をIn situ hybridization法を用いて観察した。Probeは,ヒトAmelogenin plexiform typeから得られたAmelogenin mRNAをDigoxinin標識した。mRNAシグナルは胞巣辺縁部の高円柱細胞を主体とし,AOTでは,多くの細胞でmRNAのシグナルが認められた。従って,Ameloblastomaは遺伝子発現まで分化していることを示し,AOTは蛋白合成まで分化していることを示している。
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