研究概要 |
本年度研究成果の概要:早い軸索内輸送のモーター分子については従来キネシンと細胞質ダイニンが同定されていたが,キネシンファミリーに属する10種類のモーター分子を新たにマウス脳のcDNAライブラリーから分離同定してその構造と機能を解析した(廣川)。また早い輸索内輸送の速度と輸送量がアセチルコリンやアドレナリン等の伝達物質により影響を受けることが新たに見出された(竹中)。これらの物質は細胞内のc-AMPの量を増減させることによって早い輸索内輸送の制御を行なっている。一方無椎髄動物アメフラシのニューロンの体積はラットのニューロンの50,000倍もあるが,神経突起の表面積は50倍にすぎないことが判明した(小池)。またラットの開口筋と閉口筋とを支配しているニューロンはアセチルコリンエステラーゼ合成能が前者の方が有意に高いとか(天野),ラットとサルでは延髄薄束核軸索ジフトロフィーの形態が明らかに異なる(藤澤)などニューロンでの種類や動物種による特異性のあることが新たに見出された。病的材料を用いた実験では,まず運動ニューロン疾患の脊髄スフェロイドに細胞質ダイニングが蓄積しており,キネシシの結果と合わせると早い軸索内輸送の障害が示唆される(豊島)。また種々の疾患時におけるヒト生検腓腹神経軸索内の微小管は変性にともなって安定型の低下が認められ(岡),移植した神経でも輸索内輸送の変化によると思われる形態的な特徴が見出された(光嶋)。更にβ,β′-イミノジプロピオニトリル(IDPN)を用いた運動疾患モデル動物による実験からこれ迄いわれていたのとは異なる投与初期相におけるニューロフィラメント蛋白の燐酸化パターンを見出した(小宮)。これらの結果については平成6年11月19〜20日に草津セミナーハウスで開催された班会議の席上で発表され,活発な討論が行なわれた。
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