研究分担者 |
山下 邦博 自治省, 消防研究所, 第一研究部長
渡辺 一正 建築研究所, 第五研究部, 防火研究調整官
深尾 精一 東京都立大学, 工学部, 助教授 (90112482)
室崎 益輝 神戸大学, 工学部, 教授 (90026261)
菅原 進一 東京大学, 工学部, 教授 (90011220)
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研究概要 |
平成7年度は,下記の調査及び実験を行った。 1,檜皮葺・茅葺屋根等の植物性屋根の火災安全に関する文化財建造物の所有者へのアンケート調査の分析 平成6年度に配布回収したアンケート調査結果を分析した結果,過疎化・老齢化・都市化の進行による地域社会の変化への対応が遅れ,防火管理や消火対策のうえで困難な事例が増え,消防署との緊密な連携を必要とする事例が多いことが判明した。消防法で設置義務のある自動火災報知設備の非火災報の苦情が多いため,来年度にむけて現地調査をおこない,実際の文化財建造物に複数タイプの報知設備を設置して実験をおこなう計画を検討している。 2,檜皮葺・茅葺屋根等の燃焼特性と消火特性の観測 檜皮葺・茅葺・こけら葺の模型を,平成6年度に引き続き制作し,屋根への飛び火火災を想定した火災実験を行い,火災の発生成長過程を観測し,火災感知,各種消火の応答性を調べた結果,以下が明かとなった。 (1)火災感知 風速や葺仕様を変更することで燃焼状態が変化するものの,平成6年度結果と大きな相違はない。 (2)消火方法 屋根表面からの消火が困難で,とくに屋根小屋組内部に火災が拡大した場合には,高圧大量放水でも外部からの放水では消火不可能となる。逆に屋根葺き材の裏面からの消火放水は,小量の低水圧でも葺き材の内部に容易に吸水されて表面火災まで消火する大きな効果がある。 3,具体事例観察による総合的防火手法検討 重要文化財建造物である法華経寺祖師堂(こけら・千葉)・旧田中家住宅(茅・岐阜)・富部神社本殿(檜皮・愛知)・旧伊藤家住宅(茅・神奈川)等で,火災感知・消火放水手法を総合的に検討した。茅屋根建物では多く室内からも屋根裏面が見える構造が多く,裏面にも水をはじく化粧的茅層などがあって,これが吸水を妨害する。着火した茅材を早期に取り外す破壊消防手法が重要である。檜皮葺・こけら葺の場合は,小屋組内部にスプリンクラ-消火装置を防火区画兼排水用二重屋根とともに設置することが効果がある。小屋内部への延焼速度を遅くする不燃素材を葺き材の下に設置することと共に,引き続き次年度研究の課題となる。
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