研究課題
一般研究(A)
本年度は、大学組織変容過程の面からみたポスト大衆化段階の定義・時期設定・指標の選択等について検討するために、戦後日本の高等教育の発展過程を理念的・歴史的・数量的に跡づけることをねらいとした準備的な研究会を数回開催した。その際、検討材料を整理する目的で、日本の高等教育に関するデータベースの構築を並行させた。これは、大学教育研究センターがかねてから保有している統計データベースを拡張し、特に1980年代後半から現在に至るまでの時系列データを追加したものである。これら数量的データ等を元に、またポスト大衆化状況の先行国であるアメリカの事例を参照しつつ、日本の高等教育におけるポスト大衆化状況を分析した。その結果、各種の統計資料が示すところでは、日本では1970年代後半にすでにある種のポスト大衆化状況に突入しており、1990年代以降の状況は、量的拡大の再開局面として観察できること、但し、そうした拡大傾向の内容を検討する限り、その状況は第二のポスト大衆化とも言える局面を含んでおり、1970年代のそれをポスト大衆化の前期とするならば、最近の状況はポスト大衆化の後期段階と呼ぶことも可能であることがわかった。以上のように日本の状況を位置づけた後、同じ時期における他国の状況を把握するため、以下の諸国を対象に、各大学の組織変容過程を分析しうるような各種資料の収集作業に着手した。主な対象国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、オーストラリアであるが、その他の国も適宜補足的に対象に含めた。それぞれの国について責任者が適当な基準で対象大学を選定し、各大学に対し、大学の組織等に関する情報を得られるような資料類を送付請求した。その詳細な検討は次年度以降に実施する予定である。
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