研究課題
一般研究(A)
本年度はまず、支石墓研究会を組織して、定期的に研究集会をもち、東アジア諸地域の支石墓の集成とその分析を行った。日本に関しては、長崎・熊本両県の支石墓について分析結果をまとめるとともに、日本支石墓地名表を作成した。朝鮮については、半島全体の支石墓の分類・編年などを行った。そして、中国に対しては、主要な分布地域である東北地方の蓮寧・吉林両省の支石墓の分類・編年などを試みたほか、揚子江下流域の浙江省の支石墓の現状を分析した。ついで、長崎県西彼杆群西海町天久保所在の天久保遺跡の支石墓群を発掘調査した。まず、周辺一体にわてって分布調査を実施したところ、大きく二群に分かれることがわかった。便宜的に東群としたところでは、支石墓の上石と思われるものが3基、現在の墓地の中に介在している。この地区に対しては、全体の地形実測を行った上で、支石墓の位置を明確にし、また、3基の支石墓の10分の一平面図を作成した。いっぽう、同じく西群には箱式石棺墓と支石墓から構成される墓群が認められる。そのうち支石墓は、南・北に2個所、それぞれ1基と2基認められる。南側の1基はすでに原位置から移動しているが、北側の2基はほぼ原位置に遺存なしている。そこで後者の2基の支石墓の周辺の地形測量から調査に着手し、ついで上石を除去して下部を発掘したところ、石棺を埋葬施設とする支石墓であることがわかった。そして、支石墓の南側一帯に試掘溝を設定して、遺構の有無・内容などを追求した。