本研究は、共用空間に立体街路を取り入れた実験集合住宅NEXT21において、立体街路に対する居住者の意識や行動等を調査・分析し、それらを統合して、集合住宅における立体街路計画のあり方を検討するものである。研究は3つの方法をとる。1つ目は、立体街路を回遊したときに人間の目に入ってくる情報を一眼レフカメラを用い記録し、その写真情報から立体街路における視覚構造と空間構成の関係を考察した。2つ目は、居住者に対するアンケート調査から、立体街路に対する意識と利用の関係について分析を行った。立体街路に対する居住者の印象は、かなり肯定的な結果であった。また、7つの行為に対する質問の回答を類型化すると8つのグループに分かれ、「必要活動型」「任意活動型」「社会活動型」等に意味づけられる。特に「居心地のよい空間」は、任意活動型を示す傾向が強い。3つ目は、ビデオ画像によって得られたNEXT21における立体街路の利用実態から、立体街路上の様々な活動の可能性を検討した。立体街路の天井に配置された5台のCCDカメラによって各階の主要部分の映像をタイムラプスビデオに記録し、活動範囲や経路を各カメラの映像から分析した。外出・帰宅(必要活動)については、経路の選択は、歩行目的・荷物・心理状態などが相互に影響しあいおこなわれているが、必要活動には、早さ・近さ・容易さといった効率が最も重視される。また「NEXT21内の活動」では、自住戸付近の掃除や植栽の手入れ、散歩等の「任意活動」や、立ち話などの他の人々との接触によって生まれる「社会活動」が見られた。立体街路の随所でJ.ゲ-ルのいう「屋外活動」が観察され、立体街路が生活空間として利用されていることがうかがえる。
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