研究概要 |
気球・超伝導スペクトロメーターによる宇宙起源反粒子の精密探査(BESS気球実験)は、気球による大気上空での宇宙粒子線観測を通し,宇宙の初期過程に発生したと考えられる"物質と反物質の対称性破れ"など、「初期宇宙における素粒子現象」を探る事を目的とした。本研究は、高エネルギー物理実験分野で長年にわたって培われた薄肉超伝導電磁石技術、高性能粒子検出器技術を応用・駆使し、1m^2srに迫る大立体角スペクトロメーターを実現し、これまでに比べ、一ケタ以上高感度な宇宙線反粒子の探索を行い、科学観測結果として以下の成果を得た。 ・超伝導スペクトロメーターによる気球実験において、「質量同定」を伴う確実な方法で、1GeV以下の宇宙線反陽子を初めて検出し、40余イベントの反陽子の観測によって宇宙線反陽子の存在を確立した。また、そのスペクトルが、宇宙線標準伝播モデルによる二次粒子スペクトルに比べ僅かながら平坦であり、10^<-2>(m^<-2>sr^<-1>s^<-1>GeV^<-1>)のレベルである観測結果を得た。 ・反ヘリウムの探索については、これまでの観測の中に反ヘリウムの候補はなく、Rigidity(運動量/電荷)が0.5から16GVの範囲で反ヘリウム/ヘリウム比の上限値として2x10-6を得た(95%信頼度)。 これらの結果は、physical Review Letters,Astrophysical Jounal等にすでに掲載または掲載が予定されており、また宇宙線物理国際会議等でも、非常に高い評価を得た。
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