研究概要 |
有機伝導体θ-(BEDT-TTF)_2I_3において最初に発見された角度依存磁気抵抗振動効果(ADMRO)は、層状物質のc-軸方向の伝導度が磁場の角度の関数として振動的に変化するというもので,弱い変調のかかった円柱状のフェルミ面におけるextended orbitとブリルアンゾーンとの整合効果として理解されている.ρ_<zz>(θ)のピークの位置はck_Ftanθ=(n-1/4)π,n:integerという関係で与えられ,フェルミ円柱の半径k_Fを知ることができる.今回,ステージ2,3,4のSbCl_5-GICおよびステージ1のCsO-GICについて磁気抵抗の角度依存性などを調べた.ステージ2,3のSbCl_5-GICにおいては,tanθに関して周期的な抵抗のピークが観測される.ピーク位置については,ステージ2の試料でtanθ=2.52(n-0.56),ステージ3の試料でtanθ=1.43(n-0.85)という関係が得られた.tanθの周期から求めたフェルミ円柱の半径は,SdH振動の主要な周波数の一つと一致する.試料はc面内については,数μmスケールのモザイク構造を持っており,面内角度については平均されたものが現れる.従って,ADMROが観測されるということはもとのフェルミ柱の断面がかなり円に近いことを示唆する.位相因子が1/4πからかなりずれていることは,フェルミ面変調の高調波成分などを考えることにより定性的に説明できる.
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