研究概要 |
この研究の主要な目的は重い電子系化合物で真に新しい概念の導入が必要な研究を発展させることにあった。 1.ウラン化合物のKonodo screeningと四重極相転移に関する研究。 2.スピンの量子揺らぎの大きい重い電子系での量子相転移に関する研究。 等に注目してURu_2Si_2、CeRu_2Si_2とその周辺の化合物について研究した。ウラン化合物では、5f電子が局在し磁気相転移に伴って電子-格子相互作用により格子が歪む(U_2Rh_3Si_5、ライデン大学との共同研究)場合、5f電子が近藤効果によりフェルミ液体になる場合、四重極近藤効果の場合などがある。ウラン原子の結晶場中での5f電子状態と磁性が密接に関連しており、U_<1-x>La_xRu_2Si_<>中に於ける希釈ウラン原子の電子状態の研究を行い、結晶場準位と低温磁性の関係を明らかにした。スピンの量子ゆらぎに関係して、CeRu_2Si_2の中性子散乱によるshort range orderの研究、Ce(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2(0.05【less than or equal】x【less than or equal】0.3)のスピン密度波(SDW)、及びx=0.3, 0.4, 0.5について(0.5【less than or equal】x【less than or equal】1では、反強磁性相転移が生ずる。)、量子相転移の可能性に関する研究を^3He/^4He希釈冷凍機を使用して行った。Ce(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2はRh濃度x_c0.03, x_c=0.4でSDW、及び反強磁性相転移温度T_NがT_N→0になる。Ce(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2(0.05【less than or equal】x【less than or equal】0.3)のT_K(〜20K)はT_N(<5.5K)に比べて高い。特に、T_N〜0の臨界濃度x_c0.03、x_c=0.4の相転移には熱ゆらぎの他に量子ゆらぎが非常に大きく、熱ゆらぎによる比熱、帯磁率の変化は小さい。量子相転移に関係したCe(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2での研究では比熱の異常な現象の観測は30mKの低温まで行われているが、この現象が量子相転移として解析できるか、あるいは単に試料の不均一性によるT_Kの分布によるものであるかは今後の課題である。量子相転移が確立すれば従来の古典相転移と異なる新しい分野を開拓したことになる。この他、重い電子系における磁気モーメントの発生、磁気相転移の研究をμSRにより行った。
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