平板試料・反射型に基づいた光学系として、世界で初めての多連装計数装置を備えた放射光用粉末回折計を製作し、迅速な高分解能粉末回折データの収集を可能にした。本計画は、平成6年度の装置の設計・製作に始まり、平成7年度初めの高エネ研放射光実験施設への完成した回折計の導入、予備的実験の開始、平成7年度のビームライン改築を経て、平成8年度の粉末回折ステーション共用運転の開始に至るものである。平成8年度においては以下の実験を中心に行った。 1)ビームラインモノクロメータ下流におけるミラーの使用により、ピーク頂点強度において10〜12万counts/sという、極めて高い計数を記録し、高分解能と高強度を同時に実現できることが示された。2)種々のアナライザー結晶による分解能への影響に関する研究を行った。その結果、観測された分解能曲線の変化は、使用したモノクロメータ結晶およびアナライザー結晶に基づいて計算された理論曲線と良い一致を示した。3)種々の鉱物結晶の構造をリ-トベルト法を用いて構造の精密化を行った結果、単結晶法によって求められた製造パラメータと極めてよい一致を示し、粉末法によって単結晶法と同レベルの構造解析ができることが示された、4)運用の習熟とともに各種装置・実験パラメータの最適化が行われた結果、通常、1日に3本の高分解能データを測定できることが示された。これは高分解能粉末回折データの収集として、極めて高効率の実現である。
|