研究概要 |
鉱物結晶とガスや溶液などが反応する際,その界面で何が起っているかを原子レベルで捕えるべく,この研究を始めた。まず,長崎県と新潟県下で試料を採取し,X線,電子顕微鏡,EPMA等でされらのキャラクタリゼーションを行った。また,微分干渉顕微鏡,位相差顕微鏡で結晶表面の観察を行った。用いた試料は赤鉄鉱と方解石である。赤鉄鉱は気相からの成長,方解石は溶液成長したものであるが,それぞれ特有の成長丘が生じている。なかでも方角石の成長丘を構成する渦巻きには,成長による構造とわずかな溶解による構造の双方が確認できた。結晶内部の組織と合わせて考察すること,成長-溶解を繰返しながら,成長の方が卓越しているために全体としては成長していることが判明した。成長が卓越しているものの,なぜ成長-溶解の繰返しが行われたか,その要因については今後検討すべき課題として残った。 また,CVD法でダイヤモンドを気相成長させたところ,ダイヤモンドの形成は基板の種類によって異なることが明らかになった。即ち,基板としてモリブデンを用いた場合に比べて,タングステンを用いた方が格段に多数のダイヤモンドが形成した。種々検討の結果,ダイヤモンド形成以前に,タングステン基板表面にまず炭化タングステン(WC)結晶の薄膜ができ,その上にダイヤモンドが結晶化することが明らかになった。これは,タングステン基板上にまず炭素物質が降り注ぎ,WC薄膜ができる。WCの(0001)面とダイヤモンドの(111)面における炭素原子がお互いに接合してCSL格子を形成しやすい配列になっているため,ダイヤモンドがWC上に容易にエピタキシャル成長するものと考えられる。
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