研究概要 |
鉱物結晶とガスや溶液などが反応する際,その界面で生起する現象を原子レベルで捕らえる研究を始め,昨年度は赤鉄鉱,方解石を試料とし,それらのキャラクタリゼーションと結晶表面の観察を行った.また,CVD法で気相成長させたダイヤモンドの成長過程についても検討を加えた. 今年度はダイヤモンドの成長過程にさらに詳細な検討を加えるとともに,金雲母の溶解過程や隕石の生成条件など天然現象の解明のための基礎的研究を開始した. CVD法によるダイヤモンドの気相成長には,基板としてタングステン板を用いるとダイヤモンドの核形成が著しく促進されることは,昨年度の研究で明らかになったが,その原因はタングステン板が圧延で作られているために,タングステンの(100)が板面上に方位配列しており,そこに炭素が付着し,WCが形成されることが走査型プローブ顕微鏡の観察で明らかになった. 天然における溶解のモデルケースとして,金雲母を塩酸酸性溶液で溶解する実験を行った.その結果,金雲母からの元素の溶脱はK>Fe>Mg,Al>Siの順に生じ,結晶の方は金雲母からバ-ミキュライトへと構造内の層に沿って進行することが判明した. また,コンドライト隕石に含まれる斜長石のAl/Si秩序度から,それらの隕石の生成温度を推定したところ,H6,L6,LL6コンドライトはそれぞれ755℃,840℃,830℃となった.これらは斜方輝石温度計による推定温度とほぼ一致する.
|