研究概要 |
本年度が最終年度であることを考慮し,所期の目的である「低温加工雰囲気中における超精密加工を実現するための最適な加工システムの構成を提示すると共に、それによる難削材の超精密加工を行い,その妥当性及び有効性を確認すること」を達成するために,要素研究の総合評価を行い,提案した方法とシステム構成の有効性を確認した.具体的な研究成果は以下の項目に集約できる. (1)既に過去数年間をかけて開発を進めてきたダイヤモンド工具による超精密切削加工を対象とした超精密加工機のプロトタイプについて,新たな観点から,その再設計と構造変更を行い,低温加工雰囲気中における超精密加工が可能な加工環境制御超精密加工システムを構築した.更に,その性能評価を行った結果,所期の目的を達成可能な構造構成であることを確認できた. (2)次世代生産環境において加工ニーズが拡大している最も重要な難削材のひとつであるチタン合金を対象に,常温及び低温のケロシン,エタノール,乾式の各種加工雰囲気中における超精密加工を行い,それらの切削現象の違い,切り屑生成過程の差異を実験的に明らかにした.その結果,チタン合金の超精密加工を実現する場合に,低温加工雰囲気,特に低温に温度制御されたエタノールを加工点近傍に供給した場合,その冷却効果が高品位加工を実現する際の重要な因子になることを明らかにした. (3)チタン合金の微小切削領域における特徴的な切削過程,工具及び加工表面の特性,工具材種と加工材料の間の相互作用について微分干渉顕微鏡及び非接触3次元微細形状測定装置等に用いて評価した.その結果,チタン合金の微小切削機構を解明するためのモデルを提示すると共に,在来加工ではせん断形切り屑が生成されるのに対し,微小切削領域においては,流れ形切り屑が生成されることなど,超精密加工領域における特徴的な切削現象を明らかにした.
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