研究概要 |
本年度は,超伝導電力機器の実用絶縁設計において考慮すべきクエンチ時の絶縁環境を想定し,液体ヘリウムの動的絶縁破壊現象に関する基礎的特性を明らかにすることができた.超伝導線-平板電極系を液体ヘリウム中に浸漬し,クエンチ・絶縁破壊合成試験を行った.本実験により,超伝導線のクエンチが液体ヘリウムの動的絶縁破壊を誘導することを検証した.また,種々のパラメータ設定における動的絶縁破壊特性,高速度ビデオによる熱的気泡の挙動観測,クエンチ〜動的絶縁破壊過程における部分放電計測から,以下の知見が得られた. (1)液体ヘリウムの動的絶縁破壊電圧は,静的絶縁破壊電圧に対して最大1/(10)まで低下する. (2)クエンチ〜動的絶縁破壊過程において,msオーダーの時間遅れが存在する. (3)超伝導線のクエンチに伴って半径40μmの熱的気泡群が液体ヘリウム中に発生し,その挙動は超伝導線近傍の高電界領域におけるグレディエント力に支配・加速される. (4)短ギャップにおける動的絶縁破壊は,熱的気泡群がギャップ間を橋絡した時点で発生し,印加電界にのみ依存し,気泡発生量には依存しない. (5)長ギャップにおける動的絶縁破壊は,熱的気泡群が平板電極に到達・反射した後の擾乱状態の中で発生し,印加電界のみならず気泡発生量とその挙動に依存する. (6)長ギャップにおけるクエンチ〜動的絶縁破壊過程の時間遅れは,クエンチ後のジユ-ル発熱量によって超伝導線の諸元に依存しない統一的な評価ができる. 動的絶縁破壊の前駆現象として,部分放電がクエンチ後の熱的気泡の進展とともに発生・成長した後,動的絶縁破壊に至る. 超伝導コイル-平板電極系の動的絶縁破壊は,必ずしも最短ギャップで発生するとは限らず,超伝導線-平板電極系よりも複雑な様相を呈する.
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