研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,超伝導線および超伝導コイルのクエンチに伴う液体ヘリウムの動的絶縁破壊特性とそのメカニズムに関する研究を行った.特に,昨年度に購入したクライオスタットおよび高速度ビデオを用いて,超伝導コイルのクエンチ後における気泡挙動を2方向から観測し,動的絶縁破壊現象との位置的対応を明らかにすることができた.本年度の実験的検討によって得られた主な知見は,以下の通りである. 1.超伝導線-平板電極系の電極配置をパラメータとして,液体ヘリウムの動的絶縁破壊特性に与える気泡挙動の影響について検討した.その結果,ギャップ長が小さい場合には,動的絶縁破壊電圧に対する電極配置の影響は小さく,ギャップ長の増大に伴い,不平等電界下におけるグレディエント力と浮力との相対的関係から,電極配置の影響が顕著に現れることを明らかにした. 2.平等電界下における液体ヘリウムの動的絶縁破壊特定を測定し,不平等電界下における特性と比較・検討した.平等電界下では,ギャップ間の気泡中に絶縁破壊が生じると同時にギャップ間の全路破壊に至ることを明らかにした.このため,平等電界下においては,気泡中の放電開始が液体ヘリウムの動的絶縁破壊を決定し,不平等電界下よりも動的絶縁破壊電界が低下することを示した. 3.超伝導コイル-平板電極系において,クエンチに伴う気泡の発生・伝搬と動的絶縁破壊との関係について検討した.クエンチは任意の位置から確率的に発生し、超伝導コイル面上を2次元的に伝搬する状況を高速度ビデオによって撮影することができた.また,クエンチ発生点におけるジュール発熱量は伝搬領域よりも大きく,動的絶縁破壊が誘導されやすいことを明らかにした.
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