鉄筋腐食によるRC構造部材の耐力性能低下に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06402045
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 友澤 史紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50211404)
• 研究分担者: 野口 貴文 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (80208321) ; 小谷 俊介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30133101)
• キーワード: 鉄筋コンクリート部材 / 鉄筋の腐食 / 炭素繊維シート / 耐荷性能 / 変形性能 / 耐久設計 / 耐震診断 / 有限要素解析

研究概要

1、鉄筋の腐食グレードを3段階に設定し、柱試験体の軸力を受けた状態での正負繰り返し水平加力試験を行い、鉄筋の腐食に伴う柱のせん断耐力性能の低下について検討した結果、また、腐食劣化したRC柱を炭素繊維シートによって補強した場合の耐力・変形能力の回復について検討した結果、以下の知見が得られた。
(1)帯筋が局部的に腐食した場合には、帯筋の破断と主筋座屈による脆性的なせん断破壊が生じる。
(2)鉄筋の腐食したRC柱の耐力性能および変形性能の低下は、鉄筋の腐食による鉄筋の力学的性能の低下、鉄筋の局部腐食による鉄筋の破断、繰り返し加力による鉄筋のコンクリートとの付着破壊、およびかぶりコンクリートの剥離による拘束力の低下が原因である。
(3)炭素繊維シートによるせん断補強は付着割裂ひびわれおよびせん断ひび割れの拡大防止に役立ち、拘束効果を向上させるため、鉄筋の腐食したRC柱の補強方法として非常に適している工法である。
2、腐食のかなり進行したRC梁に対して、炭素繊維シートによる補強を施した結果、以下の知見が得られた。
(1)載荷時に炭素繊維シートが剥離しないように、炭素繊維の能力を十分に発揮できる方向に貼付することによって、鉄筋が腐食したRC梁の曲げ耐力およびせん断耐力を回復させることができる。
(2)炭素繊維シートの物性と付着性能を組み込むことで、有限要素法により、炭素繊維シートによる補強効果を表現できる。
3、以上の検討に基づき、RC構造物の耐久設計における寿命算定のあり方およびRC構造物の耐力診断・耐震診断における鉄筋腐食の評価方法について検討した。

研究成果

• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか1名: "鉄筋の腐食によるかぶりコンクリートのひびわれ発生性状" 第50回セメント技術大会講演要旨. 238-239 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか1名: "鉄筋腐食が鉄筋とコンクリートの付着性状に及ぼす影響" 第50回セメント技術大会講演要旨. 240-241 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか2名: "炭素繊維シートによって曲げ補強したRC梁の有限要素解析" コンクリート工学年次論文報告集. 18-1. 1065-1070 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか2名: "鉄筋腐食をモデル化したRC梁における炭素繊維シートの曲げ補強効果" コンクリート工学年次論文報告集. 18-1. 1077-1082 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか2名: "塩害による鉄筋腐食がRC梁の耐力性能低下に及ぼす影響" コンクリート構造物の補修工法に関するシンポジウム論文報告集. 18-1. 87-92 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか5名: "鉄筋が腐食したRC構造部材の炭素繊維シートによる補強(その1)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. A. 343-344 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか6名: "鉄筋が腐食したRC構造部材の炭素繊維シートによる補強(その2)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. A. 345-346 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか7名: "鉄筋が腐食したRC構造部材の炭素繊維シートによる補強(その3)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. A. 347-348 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか6名: "鉄筋が腐食したRC構造部材の炭素繊維シートによる補強(その4)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. A. 349-350 (1996)
• [文献書誌] 友澤史紀、野口貴文ほか8名: "鉄筋が腐食したRC構造部材の炭素繊維シートによる補強(その5)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. A. 351-352 (1996)
• [文献書誌] F.Tomosawa,T.Noguchi etal.: "Effects of rebar corrosion on the structural performance of singly renforced beams" Durability of Building,Materials & Components. 7. 571-580 (1996)