最近わが国では浮体式空港など超大型の海洋構造物の計画・設計が行われつつある。このような浮体式人工島は今までの海洋構造物には無い程、非常に大きい(数キロメートルの長さ)ことからその安全性評価について従来の海洋構造物の安全に対する考え方とは異なった方法論が必要である。またその評価の信頼性も格段に高いものでなくてはならないことは、そのサイズ、非常に長期にわたる設置などから考えて明らかである。 本研究の目的は以上のような観点から次の二つである。 (1)地理的スケールとほぼ同じスケールの浮体海洋構造物の波浪に対する応答の推定に関して問題点を明らかにすると同時に、応答の合理的推定法を確立すること。 (2)浮体式人工島の設置は沿岸域であると予想されるので、沿岸域の長期海象予測の信頼度をあげること。 (1)の目的に対して次の成果が得られた。 (ア)沿岸域に設置される浮体式人工島の水平方向のスケールは、海岸傾斜の水平方向スケールとほぼ同程度である。そこで、海底の傾斜のため海洋波が変形、屈折する効果を考慮した人工島に作用する波力の計算法を確立した。この方法では海岸からの反射波、人工島を支持する多数の要素浮体間の流体力学的相互干渉に対する海底傾斜の影響を数学的に正しく表現されている。 (イ)波浪によって生じる超大型浮体の弾性変形の理論計算法を開発した。 (ウ)玄界灘における海洋波観測の結果と新しい波浪予測モデルによって沿岸域の高信頼度の波浪の長期予測法の方向づけを行った。
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