研究概要 |
これまでの実験的及び理論的研究から,既存断層で発生する不安定すべりに伴う高周波震動は断層面上のアスペリティの脆性破壊によるものと推測される.この考えが正しければ,断層上で安定すべりが発生するときにも,アスペリティの脆性破壊による微小破壊振動が観測されるはずである.本年度は,我々の高周波強震動発生モデルの妥当性を検証する目的で,断層の安定すべりに伴って発生する微小破壊振動の性質について重点的に調べた.岩石すべり実験は,既存断層をもつ花崗岩を試料として用い,微小破壊振動を捉えてその震源決定をする目的で多数の圧電素子を試料表面に配置して,試料を2軸圧縮して行った.岩石実験の結果によると,断層面上に震源をもち,アスペリティの脆性破壊によるものと考えられる微小破壊振動が確かに観測された.巨視的すべり速度の増大とともに,(1)単位すべり量当たりの微小破壊の発生数は減少し,(2)微小破壊の規模の平均値は減少した.これらはともに,巨視的すべり速度の増大によりアスペリティの強度回復のための時間が減少するためと考えられる.この考えは,既知の脆性岩石の破壊・摩擦特性の時間依存性と調和する.実際に,実験結果の一部は,岩石力学で広く用いられている時間依存性を考慮した摩擦構成則により説明可能であることが明らかになった.不安定すべりの発生時は,アスペリティの強度回復のための時間は非常に長いため,アスペリティの脆性破壊による高周波振動は非常に激しいものになると考えられる.
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