研究概要 |
1.CVタイプのビガラノおよびアエンデ隕石中のDark inclusion(DI)のSEMによる観察,分析を行ない,その中に水質変成を受けた後,熱による脱水を受けたことを示す証拠およびデータを見出した。特筆すべきは,天体上で液体の水が関与したことを示す脈状組織が見出されたこと,および層状ケイ酸塩が熱変成により転移したと思われる繊維状のカンラン石が多量に存在することを確認したことである。このことは,DIの母天体では大規模な水質変成が起こり,コンドリュールやマトリックスが大部分層状ケイ酸塩と化し,その後,水の枯渇によって熱変成に転じ,層状ケイ酸塩が脱水・転移したことを示している。いずれのDIも,その母岩である隕石が変成したものと考えられることから,ビガラノやアエンデ隕石もその母天体で水と熱による変成作用が起こったことを示唆している。このことは,これまでの定説をくつがえす,全く新しい解釈と言える。 2.3つのCOタイプ炭素質コンドライトのCAIを調べ,隕石ごとにCAI中のネフェリンの存在量が大きく異なることを見出した。そして,ネフェリンの存在量は,CO隕石の熱変成度と良い一致を示すことがわかった。これまで,CAI中のネフェリンは低温になった原始星雲ガスとの反応で形成されたと考えられてきた。今回の研究により,ネフェリンの形成は,隕石母天体集積後に起こった隕石の熱変成作用に関係している可能性が高いことを示唆している。 3.アエンデ炭素質コンドライトを衝撃波発生装置を用いて衝撃圧縮し,隕石組織の変化を調べた。その結果,コンドリュールが衝撃波を加えた方向に扁平する事実を発見した。これまで,コンドリュールの扁平が衝撃波によるものか,母天体集積時の圧密によるものか論争があったが,この実験により衝撃波によることがほぼ確定したと言える。
|