研究概要 |
1.アエンデ隕石中のさまざまなタイプの暗色包有物(DI)の,分析電子顕微鏡(SEM)による詳細な観察・分析を行ってきた。その結果,すべてのDIから水質変成を受けた後,熱による脱水熱変成を受けたことを示す証拠およびデータを見い出した。また,これまでDIの組織にはなぜ大きなバリエーションがあるのかは不明であったが,今回の研究によりそれは水質変成作用の程度に関係があることがわかってきた。いずれのDIも,その母岩であるアエンデ隕石が変成してできたものと考えられることから,アエンデ隕石の母天体にはかつて水と熱源が存在し,水質変成作用,熱変成作用がかなり活発に起こったものと解釈される。 2.水質変成作用の過程および条件をもっと定量的に知る目的で,水質変成実験装置を用いてアエンデ隕石を人工的に変成させる実験を開始した。その結果,これまで水質変成を経験したと考えられているCI, CM, CV炭素質コンドライトに見られるのと同じ様な水質変成組織を再現することに成功した。実験生成物のSEMによる研究によって,水質変成による鉱物の変化や元素移動の詳細が明らかになりつつある。 3.隕石母天体の衝撃変成作用を研究する目的で,マ-チソンCM炭素質コンドライトに衝撃波発生装置を用いて衝撃波(5,10,20Gpa)を与え,その影響をSEMを用いて詳細に調べた。その結果,10Gpaからコンドリュールの偏平がおこり,20Gpaにおいてショックベインが生成した。マ-チソン隕石の衝撃に対する影響は,非常に不均質で,局所的に高温が発生するなど,他の隕石とは非常に異なることがわかった。これは,多孔質のマトリックスの体積比が大きく,含水鉱物を多量に含み,揮発性元素に富むというマ-チソン隕石の特殊性に起因しているものと思われる。
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