研究概要 |
1.ヴィガラノCV3隕石の見い出された特異なDIに焦点を当てて研究を行った。このDIは,1990年にJohnson et al.によって見つけられたもので,湾曲した帯状の特異な組織を持つものであるが,その鉱物学的詳細は不明のままであった。我々は,このDIの組織が地球の砂岩堆積層にしばしば見られる皿状構造と類似していることを発見した。皿状構造は,砂の粒間を水が通り抜けるときにおこる流動化現象にともなって形成される組織である。このことは,すなわち,DIの母天体である初期微惑星において水の流動が起こったこと,またそれによって微粒子の流動化現象をともなう堆積作用があったことを示す最初の有力な証拠と言える。 2.CV隕石母岩にもDIと同じような変成の影響が見られるかどうかを調べる目的で、ヴィガラノCV隕石のコンドリュール・リムの研究を始めた。コンドリュール・リム,はこれまで,原始星雲微粒子が集積してできた原始的なものだと考えられてきた。しかし,今回の研究の結果,リムの中にはコンドリュール自体を変代変成してできているもの,またコンドリュールの周りにあったマトリックスの残存物があることを発見した。 3.隕石母天体の衝撃変成作用を研究する目的で,マ-チソンCM隕石およびヤマト791717CO隕石の衝撃回収実験を行なった。その結果,両隕石とも10GPaからコンドリュールの偏平がおこりはじめ,30GPaくらいまで圧力の増加とともに偏平率が正比例的に大きくなることがわかった。30GPa以上では,粗粒のカンラン石や輝石の粉砕が急激に進行し,ショックメトルが発生し,全体の組織はchaoticになっていくことがわかった。このことは,これまで知られているCM,CO隕石には,shock stage S3以上(>25Gpa)の圧力を受けたものはほとんど存在しないという事実と関係があると思われる。
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