当該年度は、これまで行われてきた金属-シリケイト間の高圧下での希ガスの分配データについて整理を行うとともに、新たに導入したイギリスFIISOTOPIOC NANALYSIS社製の気体用質量分析計VG5400の立ち上げを中心に研究を行った。また、分配実験用の試料については、質量分析計の実際の地球コアのモデルに近づけるため、新たに硫黄を入れた系について高圧下での希ガスの分配実験を行った。硫黄をメタル成分にして10%と20%混ぜ20、40、60気圧下で金属部分とシリケイトを分離し、各々の希ガスを測定した。最初に行った10%硫黄の系では、金属試料中の気泡の存在が実験結果に大きな影響を与えていることがわかった。そのため、硫黄20%の系では細かくすり潰すなど工夫をこらして試料を作成した。20%硫黄の系では純粋の金属試料を用いた場合よりも、希ガスはより多く金属部分に取り込まれる結果が得られたが、これについてはさらなる追試実験が必要である。さらに窒素の分配の測定も試みた。これまで行ってきた実験方法で、高圧下で試料を作成する時のカプセルとして窒化ボロンを使用している。窒化ボロンには窒素が主成分で入っているため、試料中への窒化ボロンの少量の混入が窒素の分配に大きく影響することがわかった。そのためMgOの容器を用いた実験方法を確立した。これまで得られている結果は、窒素は金属にとりこまれやすいこと、また、希ガスの分配についても使用容器の種類により影響されることなどがわかっている。これらの詳細についてもさらに実験を重ねる計画である。
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