研究概要 |
当該年度は、窒素の分配を中心に測定を試みた。これまで行ってきた実験方法では、高圧下で試料を作成する時のカプセルとして窒化ボロンを使用していたが、窒化ボロンには窒素が主成分で入っているため、試料中への窒化ボロンの少量の混入が窒素の分配に大きく影響することが前年度の研究からわかっていた。そのため当該年度はMgOの容器を用いた実験方法を確立した。一の目潟産レルゾライトと純鉄それぞれの粉末を混合したものを用意し、粉末試料の隙間(空隙率40-50%)に存在する大気のN_2の分配を調べた。2GPa,1900℃の条件では金属の方にシリケイトの22倍ものN_2がより多く入ることがわかった。また、MgOの試料をもちいた場合に希ガスの分配データが前に報告した値とは異なることがわかった。前年度のグラファイト試料容器を用いた実験では希ガスは金属にはほとんど入らないという結果が得られていたが、MgOの試料容器を用いた実験では金属とシリケイトに同量程度分配されることが新たに得られた。これはグラファイトの容器を用いた場合には金属に炭素が大量に溶け込み、このことが分配に影響を与えるのかもしれないと考えられる。これについては詳細を検討中である。また、隕鉄を用いた金属とシリケイト包有物間の希ガス分配実験についても測定を開始した。隕鉄には母天体内でのマグマ作用でつくられたと思われるものがあり、これらの物質から希ガスの分配データが得られるものと期待される。
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