前々年度のグラファイト試料容器を用いた実験では希ガスは金属にはほとんど入らないという結果が得られていたが、前年度のMgOの試料容器を用いた実験では金属とシリケイトに同量程度分配されることが新たに判明していた。我々は、前者の場合には金属に炭素が大量に溶け込み、このことが分配に影響を与えるのもかしれないと推測していた。走査型電子顕微鏡での観察などで、まさにMgO容器と試料が反応していることが判明した。当該年度も、窒素の分配を中心に測定を試みたが、試料容器と試料が反応しないように試料容器を工夫した。同時に試料中の炭素の量も測定し、鉄中に溶解する炭素が分配にどのように影響するかを中心に調べた。前々年度、前年度に引き続き、試料には一の目潟産レルゾライト粉末と純鉄を混合したものを用意し、MgOの半焼結体、およびフォレストライト容器を用いた。MgOあるいはフォレストライト容器の内側にMoのホイルを巻き、試料容器とシリケイト試料が反応しないように工夫した。また、鉄の下にMgOを置き、鉄とMoが直接反応しないようにした。圧力を2GPaにし、炭素の含有量を変えた条件下での実験を詳細に行った。この結果、試料中の炭素の量を任意に決めることができるようになった。金属鉄に取り込まれる炭素の量は0.5から5wt%であり、炭素が金属鉄に溶け込むに従い、窒素、カルゴンの金属鉄への溶解は減少するという面白いことがわかった。また、隕石試料についても希ガス測定を行ったが、宇宙線による放射性起源のものが中心であった。
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