(1)島弧火山岩組成の含水ガラスの赤外線吸収スペクトル 代表的な島弧火山岩(ソレイアイト質玄武岩、高アルミナ玄武岩及び石英安山岩)の組成を持つ含水珪酸塩ガラスを高圧溶融実験により合成し、その含水量を水素マノメトリーにより精密に決定した後、赤外線吸収スペクトルを定量的に解析して、組成の異なるガラスの2.8μm(molecularH_2OとOHの伸縮振動)、2.2μm(OHの伸縮+変角振動)、1.9μm(molecularH_2Oの伸縮+変角振動)における吸収バンドのモル吸光係数を決定した。 (2)玄武岩メルトへの水の溶解度の実験的研究 珪酸塩メルトへの水の溶解度はマグマの上昇と発泡の過程を理解する上で必須の基本情報である。内熱式ガス圧装置を用い1200℃、10〜80MPaの条件下でソレアイト玄武岩メルトを水に飽和させ、急冷ガラスを作成し、その顕微赤外線分光から玄武岩メルトへの水の溶解度を決定した。より高圧での既存の実験データを含め、10〜1000MPaの広い圧力範囲での水の溶解度を定式化した。 (3)マグマの脱水と水素同位体比の相関 1991-92年雲仙普賢岳および1707年富士山宝永噴火噴出物の含水量と水素同位体比に基づいてマグマの脱水プロセスが考察された。雲仙火山ではマグマが地表近くに到達する以前にマグマに溶けていた大部分の水は失われていた。ドーム直下の高粘性・高温の溶岩からの脱ガスは拡散に支配され、脱ガスの最終段階では含水量の低下とともに水素同意対比が増加したと考えられる。富士山1707年試料(玄武岩質)では、噴火の末期に向かって含水量ならびに2価鉄/全鉄比の低下し、水素同意対比が増加する。これはメルトが脱水する際に水の一部が2価鉄と反応し、H_2ガスになって系外に逃散したために水素同位体分別が生じたためと解釈される。火山ガラスの含水量及び水素同位体比の相関はマグマの脱ガス過程を見るのに有効であることが示された。
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