研究概要 |
5μsの時間分解能を持つステップスキャン式FT-IR(Bio-Rad,FTS-60A/896),YAGレーザー(SpectraPhysics GCR-100),OPO(Spectra Physics,MOPO-710)を導入し、そのたち上げを完了した。これらの波長変換素子ユニットや、時間分解赤外分光器は構成・インタフェンス性能が満足できることを確認した。またinsitu測定用の赤外セル及び真空系を製作し、分解能や精度・感度において所定の性能が達成されていることを確認した。サンプルを赤外用のNaClの窓とLaser光照射用の石英の窓を持つセルにセットし前処理を行い、パルス励起YAG Laserを照射して時間分解スペクトルを測定する。この時間分解用赤外セルは800Kまで加熱可能で、また77Kまで冷却可能である。既に予備的な実験として、Ni/SiO_2,Pt/SiO_2上に吸着したCOの光脱離、再吸着過程をこのシステムを用いて検討し、室温,10kPaではCOの再吸着は10-100μsのオーダーの過程であることを明らかにした。 本年度は、時間分解赤外分光法に適した触媒系の開発を進めた。この時間分解測定方式では時間分解スペクトルの測定を行うためには5000-10000回サンプルを励起しなければならず、サンプルの劣化が問題となる。従って、劣化の少ない触媒系を開発する必要がある。本年度は、以前よりゼオライト細孔内にPt_3(CO)_6]_n^<2->(n=3-5),Rh_6(CO)_<16>,Ru_3(CO)_<12>などの金属クラスターをゼオライト細孔内に内部合成し、その構造と反応性をEXAFSなどを用いて解析評価を行った。また新たに、27Å細孔径を有するメゾポア-FSM-16内にPt_3(CO)_6]_n^<2+>NR_4(R=CH_3,C_2H_5,C_6H_<15>)(n=3-5)を合成した。このクラスターは高い熱安定性を示し、時間分解赤外用のサンプルとして適しているといえる。また一般に、ゼオライト細孔内に内部合成された金属クラスターはゼオライト細孔内壁によって安定化されるので時間分解分光用サンプルとして有効であることがわかった。
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