研究概要 |
プロトン-電子連動型金属錯体の開発を最終目標として,分子間水素結合を介して共役系がつながった水素結合型金属錯体の合成と単結晶化を行っている.本年度は,π共役系を有し金属イオンへのキレート配位と配位子間N-H…O,N-H…N水素結合が可能なプテリジン誘導体であるルマジン(HLM)とプテリン(HPR)を用いて,[Cu(LM)_2(H_2O)_2](1),[Cu(PR)_2(H_2O)_2](2),[Zn(PR)_2(H_2O)_2].2H_2O(3)を合成し,X線結晶構造解析を行った.これらの金属錯体1-3は、いずれも水酸化ナトリウムで脱プロトン化したLMまたはPRの水溶液と金属塩の水溶液をH字管を使用して拡散し、単結晶を得た。X線結晶構造を解析の結果、金属錯体1-3は,いずれもプテリジン配位子のスタッキング相互作用と水素結合の三次元ネットワークを持った水素結合型金属錯体であることがわかった.分子ユニットは,配位子LMと配位した水分子間の水素結合とLM間のスタッキング相互作用によってつながり、結晶格子のac面に対して平行に配列した二次元シート構造を形成している.さらに、この二次元シートは,結晶格子の[110]方向に隣接する分子のLM間の2本のN1-H1…02水素結合によって三次元的につながっている.以上のように3次元の水素結合ネットワークを持つ金属錯体の開発に成功した.今後,各種の機能を測定して,新しい性質を持つ物質の開発を目指す.
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