研究概要 |
メタロチオネインは低分子量で異常に多くのシステインを含むタンパク質で、種々の金属イオンを取り込み複雑なクラスターを生成することが知られている。本研究は、生理学的に重要な銅結合メタロチオネイン及びその類縁体である銀、金置換体のクラスター構造の解明を最終的な目的としている。 1.単核の銅、銀チオラート錯体[Cu(SPh-Me_2)_2]^-、[Cu(SPh)_3]^<2->、[Cu(SPh-Cl)_3]^<2->、[Ag(StBu)_2]^-、[Ag(SPh)_2]^-、[Ag(SPh-Me_2)_2]^-、[Ag(SCPh-Cl)_3]^<2->、[Ag(SCPh-Br)_3]^<2->の構造をX線解析により明らかにした。この結果、チオラート配位子がかさ高くなくかつ酸性度が高いと3配位になる傾向があることが明らかとなった。得られたM(Cu,Ag)-S結合距離は2配位の方が3配位に比べ約0.1Å短かいことが判明した。 2.メタロチオネインの単離・精製法の検討を行った。このタンパク質は分子量が2600と異常に小さいためその精製は現在のところうまくいっていない。 3.AMT1に関しては、原子吸光および質量分析により4つの銅と1つの亜鉛が結合していることが明らかとなった。さらに完全なAMT1でないとDNAに結合できないことがEMSAにより明らかとなった。 4.得られたモデル錯体の分光学的方法の検討を行った。吸収スペクトルに関しては2配位はMLCTが220〜250nmであるのに対し、3配位では約280nmに長波長シフトした。化学発光スペクトルでは配位モードの違いを観測できなかった。M(Cu,Ag)-S伸縮振動の帰属をFar-IR及びラマンにより行い、結合距離の違いを反映するスペクトルが得られた。 5.銀チオラート錯体に関して、^<109>Ag-NMRの測定を行い、配位様式の違いを反映するスペクトルが観測できた。 上記のように、銅及び銀1価チオラートクラスターに関する数多くの知見を得ることができた。
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