研究概要 |
前年度にひき続き球状クラスターK_<9.5>H_<3.5>〔V_<18>O_<42>Cl〕・11・5H_2O,K_<10>H_2〔V_<18>O_<42>(H_2O)〕・16H_2Oが光化学的に〔V_4O_<12>〕^<4->/MeOH系より合成され元素分析,赤外吸収スペクトル,4軸X線構造解析,磁化率測定の結果を基に,結晶,化学構造及び磁気的性質が明らかにされた。 これら2つのクラスターはいずれも18コのV^<IV>O_5が縮合した(VO)_<18>O_<24>殼を形成しておりCl^-及びH_2Oが中心にそれぞれカプセル化されCl^-配位の場合H_2O配位の場合に比べV^<IV>間との静電的相互作用の相異により内径が0.1-0.2Å小さい。このためCl^-配位の場合より短いV^<IV>…V^<IV>距離,より大きいV-O-V伸縮振動エネルギー,より小さい磁化率の値が認められた。磁気化学的には室温付近では分子内の互いに独立の6コのV^<IV>O_5センターはT【less than or equal】50Kまでの温度領域において反磁性的相互作用が増加し4コの独立したV^<IV>O_5センターへと変化し,この変化はH_2O配位の場合においてより顕著であり構造化学の結果と一致した。 またNa_<12>H_2〔V_<18>O_<44>(N_3)〕・30H_2O,K_<9.5>H_<1.5>〔V_<18>O_<42>(PO_4)〕・6H_2Oも同様に光合成されX線構造解析された。後者のアニオンはTd対称をもっておりこれは同一の組成である〔V_<18>O_<42>Cl〕^<13->や〔V_<18>O_<42>(H_2O)〕^<12->がD_4dの対称性を示した事実と合わせてこれらは構造異性体の関係にあることが明らかとなった。さらにD_2hの対称性を与える〔V_<18>O_<44>(N_3)〕^<14->の結果等を合わせて,これら球状アニオンクラスターの対称性は光化学的にカプセル化された小アニオンの対称性を反映していることが判明した。
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