研究概要 |
本年度は,液-液界面反応の新たな計測法の確立,液-液界面における分配挙動,液-液界面における錯生成反応の解析を行った。 液-液界面状態の新しい評価法として共鳴SHGスペクトル法の確立を図った。定量的議論を行うために,石英基板上をロ-ダミンB色素で化学修飾し空気,水,ヘプタン溶液中での色素の配向特性を検討した。前2者での配向角はほぼ同一であったがヘプタン中では配向角に大きな変化が認められ,スペクトルによる電子状態,配向性など界面吸着分子の状態解析法としてSHG法は有効であった。さらに,水-ヘプタン界面に吸着した分子の会合体形成や配向状態についても検討し,液-液界面状態解析の基礎を確立した。また,蛍光分子をプローブとして液-液界面状態を全反射蛍光法で蛍光寿命解析を行ったところ,バルク溶液中とは異なる2種の状態が存在し,0.5nm及び200nm程度の厚さの階層構造が界面に存在すると示唆されなど新たな知見が得られた。 液-液界面のモデルの一つとしてマイクロエマルション(ME)における物質分配特性を動電クロマトグラフィーを用いて解析した。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)/1-ブタノール/n-ヘプタン/ほう酸バッファーの系でMEを調製し検討した結果,従来分配の場としてMEのコア部分が考えられたのに対し,1-ブタノールが分配を支配するという新しい知見が得られた。 液-液界面反応として2価の金属イオンと長鎖アルキル基を有するキレート試薬との錯生成をバルク溶液系並びに水-ヘプタン系で検討した結果,後者が43倍生成速度が大きく,界面では中和反応が促進されること,及びこの事実は界面の誘電率勾配やキレート試薬の配向性に起因すると考えられた。
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