研究概要 |
これまでの成果を総括し、ダイヤモンド及び立方晶BNの合成と成長機構について総合的な考察を行う。本研究ではダイヤモンドの合成および単結晶育成用溶媒としては種々の合金系を使用した。また、立方晶BN合成用溶媒としてはアルカリ、アルカリ土類ほう窒化物を使用した。ダイヤモンド合成においては、金属溶媒の選択、温度圧力条件の設定などは結晶中の不純物分布に大きな影響を与える。特に代表的な不純物である窒素はゲッター元素を溶媒に添加して、除去することが一般的である。特に代表的な、Tiゲッターが有効な金属溶媒を探索するため、Ni,Co,Fe等の単体溶媒及びFe-Ni,Fe-Co等の合金溶媒を使用してダイヤモンドの単結晶成長を行い、ダイヤモンド結晶中の窒素を赤外分光法で定量分析を行った。溶媒の種類によらずTiゲッターの最適添加量は0.5-1%であり、ダイヤモンド結晶中の窒素量は高温度育成ほど減少すること、特定の溶媒では特にその効果が顕著であることなどが分かった。また、カソードルミネセンス法によりNiもダイヤモンド結晶中に取り込まれることが分かったため、より高純度結晶を育成する溶媒としてはFe-Co合金等が望ましい。このような結果をもとにして特に高純度結晶育成に適したFe-Co合金を選択し、育成した結晶中の窒素濃度Ni濃度を定量的に評価した。 育成結晶は特に種結晶近傍で炭素の供給の乱れから、ネガティブクリスタル、包有物などが混入しやすい。これを防止する新しい結晶育成技術である再結晶化高純度化法を考案し、その有効性を検証した。また、その応用として連続的に特性の異なる単結晶を育成できることを見出している。 立方晶BNの合成機構については、CaLiBN_2溶媒を使用した系で著しく合成最低圧力が低下し、4GPa付近になることを見出した。また、など、ダイヤモンド、立方晶BN単結晶の高純度化については様々な知見が集積された。CaLiBN2結晶を徐冷法で作製し単結晶構造解析を行ったところ、Li,Nが欠損した構造中にN=B=N直鎖が存在することが明かとなり、このような溶媒結晶の特徴が低い合成下限圧力を与える原因となっていると考察した。
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