研究概要 |
(1)多孔質有機結晶のゲストとりこみ挙動 アントラセンのビスレゾルシン誘導体は水素結合ネットワークによる分子状のシートを形成し、生じた空孔には水から極性有機化合物、さらには炭化水素に至る極めて多彩なゲスト分子を、気相、液相、固相の種々の物理状態から化学量論的にとりこむことが明らかになった。 (2)多孔質有機結晶の水中からのゲストとりこみ挙動 上述のホスト化合物はアルコールやコリンなどの極性化合物を水中から化学量的にとりこむ。このとりこみ過程は誘導適合(induced fit)挙動を示すほか、高度に協同的(cooperative,allosteric)であり、酵素蛋白による基質とりこみと類似した性質を示すことが明らかになった。新しいタイプの有機固体材料(分離剤や触媒として)の可能性を示した。 (3)有機結晶における芳香環カラムのデザイン 上述のホスト化合物をアントラセンのビスピリミジン誘導体とともに再結晶すると1:1の付加体が得られる。このものはO-H・・・Nの水素結合ネットワークを有する分子状シートを形成し、その結果アントラセンスペーサーはカラムを形成する。このようにして結晶内での芳香環カラムを分子模型からデザインすること、さらにカラム内での芳香環-芳香環の距離を制御することが可能であることを明らかにした。
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