高機能性有機金属活性種の構造の解明と新規反応剤創製への展開

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06403025
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 内本 喜一朗 京都大学, 工学研究科, 教授 (90025958)
• 研究分担者: 高井 和彦 岡山大学, 工学部, 助教授 (00144329) ; 大嶌 幸一郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (00111922)
• キーワード: 低原子価金属塩 / 二ヨウ化サマリウム / マンガン / 四塩化チタン / アリルマグネシウム / ジヨードメタン / 立体選択性 / 有機亜鉛化合物

研究概要

金属または低原子価金属塩を用いて有機ハロゲン化合物を還元して得られる活性種の有機合成への活用を研究し、次のような成果を得た。
(1)1,1-ジハロアルカンに二ヨウ化サマリウムを作用させて得られる活性種はアルデヒドと高立体選択的に反応してsyn-ヨードヒドリンを与える。キラルなα置換アルデヒドとの反応では、この活性種はキラルな1-ヨードアルキル基として反応する。
(2)ブロモ酢酸エステルと二ヨウ化サマリウムとの反応を低温で行うと、高機能性有機金属活性種として4-ジョードサマリオー2-オキソブタン酸エステルが生成すること、この活性種と酸無水物との反応でジケトエステルが生成することが示された。
(3)四塩化チタンを触媒として用いると、αハロアシルシラン、アリルシラン、カルボニル化合物の三成分を結合させることが可能になることを示し、炭素骨格構築の新手法を提供し手いる。
(4)マンガン触媒の作用で、アリルマグネシウム化合物がアセチレンに付加すること、ジアリル化も可能であることを示し、有機マンガン中間体の機能性を明らかにした。
(5)マンガンに塩化鉛を添加して有機ハロゲン化合物を還元して、新規炭素骨格形成に役立つ活性種を調製した。
(6)ジハロアルカンから有機二金属反応剤の調製には、還元剤として用いる金属の選択が重要であるが、ジヨードメタンを基質として取り上げ、詳細に検討し、亜鉛化合物創製の場合には、亜鉛中に触媒量の鉛の存在が必要であることを明確にし、この活性種を純度高く調製する方法を確率した。次いでジヨードメタンを高純度亜鉛で還元して得られるヨードメチル亜鉛種を鉛を含む亜鉛で還元すると有機二金属種が生成する事を明らかにし、二金属種生成機構の一端を解明した。

研究成果

• [文献書誌] S.Matsubara: "A Samarium-Mediated,Highly Stereoselective Reaction of 1,1-Dihaloalkanes with Aldehydes : Generation of a Chiral α-Iodoethyl Building Block" Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.,. 36. (1997)
• [文献書誌] K.Utimoto: "Ethly δ-Diiodosamario-β-oxobutanoates,Generation by the Reaction of Ethly Bromoacetate with Samarium Diiodide and Synthetic Applications" Bull.Soc.Chim.France. (1997)
• [文献書誌] Y.Horiuchi: "Titanium Tetrachloride-Induced Three-Component Coupling Reaction of α-Haloacylssilane,Allylsilane,and Carbonyl Compound" J.Org.Chem.61. 4483-4486 (1996)
• [文献書誌] K.Okada: "Allylmagnesation and Diallylation of Acetylenic Compounds Catalyzed by Manganese Salts" J.Am.Chem.Soc.118. 6076-6077 (1996)
• [文献書誌] K.Takai: "Activation Manganese Metal by a Catalytic Amount of PbCl_2 and Me_3SiCl" Tetrahedron Lett.37. 7049-7052 (1996)
• [文献書誌] K.Maeda: "Stereoselective Synthesis of Allyl Vinyl Ethers from Silyl Enol Ethers" J.Org.Chem.61. 2262-2263 (1996)