研究概要 |
本研究は,高分子溶液研究に汎用のイメージングプレートの小角X線散乱(IP-SAXS)測定装置を製作し,その装置を用いて得られる実験結果を従来の光散乱,粘度,施光度等からの知見と総合することにより多様な分子形態の天然・合成高分子の希薄及び濃厚溶液物性を分子論的に一貫して説明することを目的として行ったものである。得られた主な成果は以下の通りである。1.製作したIP-SAXS装置が高分子溶液研究に有用であることを金コロイドとポリスチレン溶液に対する測定により実証した。2.ポリカーボネート及びヒアルロン酸についてIP-SAXSより得た回転半径,粒子散乱関数は光散乱からの(高分子量試料の)回転半径のみならず固有粘度データとともに首尾一貫してみみず鎖の理論によって記述された。3.非電解質半屈曲性高分子の回転半径と固有粘度への分子内排除体積効果は,鎖の堅さに依らず,準二定数理論の枠内で定量的に説明できることを見い出した。4.シ-タ点近傍でのトランスデカリン中のポリスチレンの三体クラスター積分は温度に依らず殆ど一定であることが始めて明らかにできた。5.光学活性ポリイソシアナ-トの螺旋形態の分子内反転は一次元協同現象として統計力学的に記述できることを見い出した。6.三重螺旋多糖シゾフィランの水溶液中における秩序相の構造が側鎖グルコースと溶媒の水分子との水素結合により形成されていることを誘電分散により確認した。7.ポリヘキシルイソシアナ-ト等方濃厚溶液の粘度並びに光散乱挙動はみみず鎖をモデルとした理論でほぼ定量的に説明できた。8.二種のセルロースフェニルカルバナ-ト誘導体の溶液が液晶と形成すること並びに相境界濃度の鎖長依存性が希薄容液から決定したみみず鎖パラメータを用いてほぼ定量的に説明できた。9.ポリヘキシルイソシアナ-ト溶液中に共存する等方相とネマチック液晶相関の界面張力及び界面付近での分子鎖配向を決定することに成功した。
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