研究概要 |
1.多腐植質黒ボク土壌の本学農場において、1982年11月より継続されてきた堆厩肥および化成肥料P投入有無の長期圃場試験作土を対象として、土壌中Alの存在様式に、経時的なこれらの処理の差が反映しているか否かを固体FT-NMRシステムを適用することによる^<27>Al計測を通じて追究した。 その結果、試験開始時の試料、9年後の堆厩肥連用区試料('91.8採取)、12年間の堆厩肥・化成P連用区および無堆厩肥・無化成P区試料('94.4採取)の4点について比較検討したところ、いづれの試料にも6および4配位のAlのピークが観測され、これらの経時的な処理に差はみられず、土壌中Alの配位数自体には顕著な影響を及ぼしていないと推定された。 2.植物栽培に伴う根圏域土壌中における蓄積された各種形態P化合物の変動を、栽植域(15-20mm幅)の両側に25μmナイロンメッシュによって根系の侵入を遮り、1mm間隔で区切ったrhizo-boxを用いて、トウモロコシ及びコムギを対象として追究した。 その結果、(1)栽培(50-63日)後の土壌pHは、ポット全域で低下しており(6.5→4.3-5.0)、根からのプロトン放出の影響と推察された。(2)Al,Fe結合型Pは栽植域に近いほど低下、その傾向はAl型で顕著であり、これらP化合物の作物への可給性が推察されたが、他形態Pに転換した可能性もあり、今後の追究に待ちたい。有機態Pについては、区画間の変動はなかった。 3.本学農場の多腐植質黒ボク土壌に生息する樹糸状菌根菌(Arbuscular mycorrhizal Fungi : AMF)の分離同定を、九州、北海道農試の同質黒ボク土壌のそれと対比しながら進めつつあるが、Glomus層の中に、多くの作物(ダイズ、ラッカセイ、ササゲ、キマメ、トウモロコシ、コムギ等)に菌根を形成して、培地P肥沃性のかなり広範囲条件下で生育促進をもたらす種があり、Glomus etunicatumと同定された。しかし、市販されている同種(協和発酵KK)のものとダイズを対象に生育促進、P吸収活性比較をした結果、大差(本学>協和発酵KK)があり、種レベル以外の要因についての今後の追究が望まれる。
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