研究概要 |
1.黒ボク畑の長期圃場試験における蓄積りん(P)の経年的動態を支配する要因のひとつとしてアロフエンに着目し、同心土及び試験圃場作土から沈定法に準じてアロフエン試料を調整(0.002mm以下の粘土画分)、^<27>Al及び^<29>Si-固体NMRスペクトルを観測した。^<27>Alスペクトルでは、いずれの試料からも4(+50〜60ppm)及び6(0ppm)配位Alのピークが観測され、作土化の進行に伴って4配位Alの共鳴が強まるが、蓄積Pの多少との関連はなかった。他方^<29>Siスペクトルの場合、心土では-79ppm付近のピークのみであったのに対し、作土試料からは加えて-90ppm付近のピークが観察され、作土化の進行に伴ってアロフエン構造に一定の変化が起っていることが推定された。しかし蓄積Pやケイバン比(SiO_2/Al_2O_3)との関連はなお定かではない。 2.選択溶解法に準じてアロフエン量を定量し、長期圃場試験作土中含有率の経年変化('82→'96)を追ったところ、堆厩肥連続投入区では不変であったのに対し、不投入区では上昇傾向を示した。P投入有無との関連はなかった。また、昨年までに報じたように、蓄積PのAl-P/Total-P比は経年的に約2%/年の速度で増大しているが、そのAl-Pは非アロフエンAlの変動と正相関があり(5%水準有意)、アロフエン-Alとの相関はなく、蓄積Pの動態との関連で注目された。 3.小型の二重ポットを用いて、アバスキュラ菌根菌(AMF)外部菌糸のみを通過させるナイロンメッシュで区画することによって、感染根系域とAMF外部菌糸域土壌中のトウモロコシとキマメ栽培に伴うP形態の変動を追究した。その際、稲ワラ粉末を混入すると135日間のキマメ栽培期間中に非根域、非AMF外部菌糸域では、Al-P→Org-Pの有意な変化が起こるが、AMF感染根域、AMF菌糸域ではOrg-P,Ca-P,Al-P,Fe-Pの有意な減少が観察され、これら形態Pの易動性とキマメへの可給性が推定された。また、黒ボク作土に生息するAMFのひとつGlomus etunicatumは、湛水下の水稲とも活発に共生関係を成立させることが確認された。
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