研究概要 |
RA系化合物の化学修飾:今年度は構造活性相関的考察を行なうため、活性に影響を及ぼしていると考えられるRA構造式中のTyr-3側鎖のアルキル化及びイソジチロシン(14員環)部分のバックボーントランスフォーメーションを中心に検討した。RA類の代謝を考慮して、Tyr-3側鎖はメトキシル基をC-C結合アルキル基に変換することを計画し、茜草根の主ペプチド成分であるRA-VIIを脱メチル化した後、Tyr-6残基のフェノール性水酸基のみをメチル化して微量成分RA-IIとし、さらにトリフレート化し、各種アルキル側鎖をもつ有機錫を用いてTyr-3のζ位C-アルキル化体を合成した。また、14員環部分については、RA-VIIを硝酸セリウムアンモニウムで酸化することによりTyr-6のβ位に特異的に水酸基を導入して微量成分であるRA-IVとし、さらにケトン体にして臭化アリルを反応させるとアリルエノールエーテル体が誘導され、クライゼン転位によりTyr-6のα位にアルキル基を導入する経路を開発することができた。これら成績体及び合成中間体については、活性試験を試みている。また、ペプチド結合のチオアミド化体の調製、それをキ-化合物としての新規環状ペプチド類の合成も平行して行っている。 他の植物における抗腫瘍活性ペプチドの探索:茜草根以外の植物からの抗腫瘍活性環状ペプチドの探索を実施しているが、今年度はシオンを中心に抗腫瘍活性環状ペプチド類の単離を試み、AstinA 〜Iと仮称する9種の構造を明らかにした。これらのペプチドは、L-Ser,L-alloThr,L-β-Phe,L-Abu,クロル化L-Proからなる興味ある環状ペプチドで、活性との関連からそのコンホ-メーションについてX-線結晶解析、各種NMR手法、分子動力学計算の手法などを用いて最安定コンホメーションを明かとした。また、活性の増強を目的に各種誘導体の調製も行なっている。
|