本研究では種々の機能側鎖を持つ非天然アミノ酸を合成し、それらを蛋白質の特定の部位に導入することによって、超蛋白質を作製した。さらにこの手法で蛋白質中の電子移動など、人工機能を付与することに成功した。これらの成果は次のようにまとめられる。 (1)アミノ酸の拡張:多種類の非天然アミノ酸を合成し、どのような型のアミノ酸なら蛋白質に組み込めるかを検討した。その結果、直線的に伸びた構造をもつ芳香族アミノ酸は比較的効率よく導入されることが明らかになった。これにより、酸化還元機能や光増感機能基をたんぱく質に組み込むことが可能になった。 (2)コドンの拡張(4塩基コドン法の開発):非天然アミノ酸に割り当てるコドンとして、本研究では4塩基を一度に読み取るコドン(4塩基コドン)を新たに開発した。この方法では複数の非天然アミノ酸を同時にかつ独立に蛋白質に導入するこができる可能性がある。これにより非天然アミノ酸導入のよる蛋白質の人工機能化が実用化に向けて大きく進むことになった。 (3)非天然アミノ酸を認識する抗体を用いた蛋白質の機能制御および光誘起電子移動対の蛋白質への導入:蛋白質中の非天然アミノ酸に対する抗体によって蛋白質の活性が制御できる。本研究ではL-p-フェニルアゾフェニルアラニンやL-1-ピレニルアラニンに対するモノクローナル抗体を用い、それらによる蛍光消光反応の制御や抗原抗体反応の光制御を実証すると共に、新たにL-2-アンスラキノニルアラニンに対する抗体を作製した。
|