研究概要 |
本研究は、遺伝子工学/分子生物学,細胞生物学/組織工学,高分子合成化学/バイオミメティックス、生理学/化学工学、という異なった基礎と応用にまたがる学問分野を総結集して、肝臓社会の構造機能相関を解明しつつ、より理想的なバイオ人工肝臓(ハイブリッド人工肝臓)を開発することを目的とした。 肝細胞による細胞外マトリックス・細胞増殖因子産生の解析 肝臓社会形成ならびにその病理的変化に及ぼす肝細胞自体の役割(マトリックス・細胞増殖因子等の産生等々)をin vitroの培養系を用いて解析した。その結果、TNF-αの添加により肝細胞が自らを伸展させうる細胞外マトリックス(ECM)特にラミニンを産生・分泌することを見出した。また、同じ肝細胞から新しい線維芽細胞増殖因子が産生されることも見出された。 肝細胞への新規遺伝子導入法の開発によるスーパー細胞工学の展開 遺伝子導入法の開発:我々の開発した新しい肝細胞接着因子である合成アシアロ糖タンパク質(ASGP)モデルPVLA上で肝細胞集合体を形成させ、リポフェクション法にてレポーター遺伝子(LacZ)や肝炎抵抗性に関わる癌抑制遺伝子の導入をはかりスーパー肝細胞の調製と容易な回収法の開発に成功した。さらにポリリジンにデキストラン、ヒアルロン酸、ガラクトース等々の糖鎖を導入したグラフトコポリマー型の遺伝子キャリアーを合成し、invivoやinvitroでの細胞へのDNA医薬の導入を検討した。既に我々はβガラクトース基を有する新しい高分子ミセルPVLAを用いた肝実質細胞へのinvivoでの薬物導入に成功しているが、今回ヒアルロン酸導入グラフトコポリマーをアンチセンスDNAのキャリアーとして類洞内皮細胞へ高効率でターゲッティングさせることに成功した。 肝細胞の接着マトリックスの開発とバイオ人工肝臓用マトリックスとしての応用 本プロジェクトの出発点となった肝細胞特異的接着基質PVLAによる肝細胞の増殖(DNA合成)分化の制御メカニズムさらには、組織形成メカニズムをinvitroの培養系を利用して解析し、PVLAの接着基質としての応用の可能性を拡大することに成功した。さらに新しい工学的手法であるLB膜の技術を利用してPVLAを高度に配向させることにも成功した。この技術により肝細胞の二次元培養基質としてPVLA-LB膜の新しい可能性が開けた。
|