研究概要 |
(1)深海熱水噴出孔(ベント)にはフジツボ類全4亜目中3亜目に「生きている化石」と呼ばれる原始的な分類群(エボシガイ:Neolepas zevinae Newman 1979,ハナカゴ:Neoverruca brachylepadoformis Newman & Hessler 1989,フジツボ:Eochionelasmus ohtai Yamaguchi 1990)が発見されていた. ラウ海盆のベントから第4番目のブラキレパドモルファ亜目の親属新種Neobrachylepas relica Newman & Yamaguchi 1995およびイ-スター島沖のベントからEochionelasmusの新種を提唱し,その原始性を議論した(Yamaguchi & Newman Jour.Crustacean Biol.に受理された).またEochionelasmusの北フィージ-,ラウ,マヌスの3海盆のベントからの集団標本間で,マヌス集団の付随小殻板の配列が他の2集団のそれとは異なり,それらに別々の新亜種名を与えた(Yamaguchi & Newman共著でBull.Mus.natl.Hist,Paris,4 ser.に投稿した). (2)マリアナ背弧海盆およびマヌス海盆のベントからそれぞれNeoverrucaおよびEochionelasmusのミトコンドリアDNAの16S領域の塩基配列を調べ,外群としてエボシガイ亜目を用いて系統を解析した.その結果,エボシガイ亜目から前者ハナカゴ亜目が派生し,ハナカゴ亜目から後者フジツボ亜目が派生したという系統が得られ,それはベントフジツボ類で化石記録・形態・幼生の個体発生・神経系などから考えられた系統に一致した. (3)Yamaguchi & Newman(1990)は,Eochionelasmusが現存するフジツボ亜目の中で浅海に棲むより原始的なイワフジツボ類(5種),クロフジツボ類(7種)のどれよりも原始的と評価した.ミトコンドリアDNAの系統解析でもその正当性が示された.そのうちクロフジツボ3種については長谷川・山口他(1996)に公表した.
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