研究概要 |
本研究では,光化学系II反応中心の分子構築を,その静的の化学構造としての側面と,in vivoにおける合成と分解を含めた生物学的な動態としての動的な側面の,両面から解析した。 (1)光化学系II反応中心の構造 まず,純化された光化学系II反応中心について,そのサブユニットの組成比をアミノ酸分析により解析し,5つのタンパク質サブユニットが等モル比で存在することを確認し,ついで,その色素組成について,HPLCおよびICP発光分析により,その値が,クロロフィルa/フェオフィチンa/β-カロチン/シトクロムb-559について,6/2/2/1であることを確認した。 一方,一定の水分を含むエーテル処理により,これら色素,特に2分子含まれるβ-カロチンを選択的に抽出する方法を確立し,それぞれ,0,1,2分子のβ-カロチンを含む標品の特性を解析することにより,複合体中における色素分子の配置について1つのモデルを提出した。また,単離された光化学反応中心へのDBMIB(キノン)の再構成を試みるとともに,不活性電子伝達鎖に位置するフェオフィチン分子の吸収を,スペクトル上で同定した。 (2)分子構築の動態 合成直後のD1タンパク質前駆体のC-末端切断に関与する酵素を同定し,そのアミノ酸配列情報をもとに,その遺伝子の塩基配列を決定することに決定し,この遺伝子の大腸菌内での発現,純化および純化した酵素を用いる酵素学的解析を可能にした。 また,D1タンパク質の合成の過程において,光による翻訳伸長の制御が行われていることを単離葉緑体を用いる実験で明らかにし,この光制御に介在する酸化還元因子の抽出と部分精製に成功した。 一方,D1タンパク質をコードするpsbAの広領域にPCR法によるin vitroのランダム突然変異誘発を行い,光耐性を示す変異株をシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803株について作成し,D1タンパク質上のアミノ酸置換と光耐性発現との間の因果関係の解析を行った。
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