真核生物の細胞周期制御機構

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06404020
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岡山 博人 東京大学, 医学部(医), 教授 (40111950)
• 研究分担者: 村上 浩士 東京大学, 医学部(医), 助手 (80262020) ; 神野 茂樹 東京大学, 医学部(医), 助手 (10251224) ; 永田 昭久 東京大学, 医学部(医), 講師 (50155933)
• キーワード: 細胞周期 / 分化 / チェックポイント機構 / 真核生物 / 分裂酵母 / DNAポリメラーゼ / Cdc2キナーゼ / Cdc25フォスファターゼ

研究概要

真核生物の発生と形態形成の機構を解明するには、個々の細胞の増殖と分化の普遍的な制御機構の解明が不可欠である.我々は、分裂酵母をモデルとしてこれらの分子機構の解明を進めている.今年度は、以下に述べる成果を得た.
1.S期進行をモニターしそれが完了するまでM期の開始を阻止するS-G2期チェックポイント機構のS期をモニターする主たるセンサーを同定した.Cdslと名付けた蛋白リン酸化酵素でDNAポリメラーゼαの活動をモニターし、それが活動しているときシグナルを発してCdc2キナーゼの活性化を阻止する働きをすると考えられる.
2.これまで不明であったチェックポイント機構によるCdc2キナーゼの活性化阻止機構を解明する重要な手掛かりとなる新しいG2期制御因子rdplを発見した.Pdpl蛋白質は,Cdc2キナーゼに働き掛けその高次構造を変えCdc25フォスファターゼによる脱リン酸化を制御していると考えられる.
3.S期開始似必須な因子である出芽酵母のORClに対応する分裂酵母遺伝子の変異株並びにその遺伝子の単離に成功した.
4.S期からG2期の進行に極めて重要な役割と果たしていると思われる新しい細胞周期制御因子stplを単離した.この因子は、既知のS期開始因子であるCdcl8,Orcl,Cdc21やS-G2で働いているCdc24と強い相互作用を持つ.この遺伝子の破壊株は、30℃では増殖できるが著しい高温・低温感受性を示す.

研究成果

• [文献書誌] Shimizu,M.et al.: "The G1/S boundary-specific enhancer of the rat cdc2 promoter." Mol.Cell.Biol.15. 2882-2892 (1995)
• [文献書誌] Murakami.H et al.: "A kinase from fission yeast responsible for blocking mitosis in S phase." Nature. 374. 817-819 (1995)
• [文献書誌] Terada,Y.et al.: "Reauirement for tvrosine phosphorylation of cdk4 in G1-arrest induced by ultraviolet irradiation." Nature. 376. 358-362 (1995)
• [文献書誌] Nakashima,N.et al.: "Fission yeast Rep2 is a putative transcriptional activator subunit for the cell cycle‘start'function of Res2-Odc10." EMBOJ.14. 4794-4802 (1995)
• [文献書誌] Bertolotti,R.et al.: "Livr fructose-1,6-bisphosphatase cDNA:trans-complementation of fission yeast and characterization of two human transcripts" Differentiation. 59. 51-60 (1995)
• [文献書誌] Kato,T.Jr.et al.: "Stress signal,mediated by a Hog1-like MAP kinase,controls sexual developmennt in fission yeast." FEBS Let.378. 207-212 (1996)
• [文献書誌] Okayama,H.: "Cell cycle control in fission yeast and mammals:Identification of new regulatory mechanisms" Adv.Cancer Res.(in press), (1995)