研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)を代表とする疾患群に対して、我々は慢性炎症性増殖性弛緩(Chronic inflammatory proliferative disease, CIPD)なる疾患カテゴリーを提唱している。CIPDにおいては、慢性炎症の関与、免疫応答の関与、及び病的組織における細胞の慢性的増殖を特徴とする。さらに、インターロイキン6(IL-6)などのサイトカインや、ICAM-1などの種々の接着分子、あるいはc-fosなどの初期応答遺伝子などの複合的遺伝子異常発現を特徴つする。RAをCIPDのモデルとしてとらえて、RAの病態と、その病因を実験病理学の立場より、分子生物学的手段によって明らかにするのが本研究の目的である。 本研究によって以下の点を明らかにした。1)RA由来骨髄ストローマ細胞化学物質に高発現している新規な膜分子BST-1とBST-2のcDNAをクローニングし、その全構造を決定した。2)可溶型BST-1のELISAAを確立し、重症のRAの患者の一部に血清中BST-1の濃度が高いことを示した。3)BST-1は、ADP-ribosyl cyclase活性を有していることを明らかにした。4)BST-1は、未熱リンパ球に一過性に発現していることを示した。5)BST-1はマクロファージや好中球にも発現しており、レセプターとして機能する。6)マウスBST-1遺伝子をクローニングすると共にBST-1欠損マウスを作製した。7)HTLV-1のp40taxのみなず、RA組織に高率に検出できるヒトパルボウイルスB19のNS1蛋白もNF-κBを介して、IL-6プロモーターを活性化すいることを明らかにした(東北大、菅村和夫教授らとの共同研究)8)IL-6受容体を介する細胞増殖・マクロファージ分化・あるいは、抗アポトーシスなどのCIPDの病態に深く関与すると考えられる細胞内シグナ伝達経路にJAK-STATが重要な役割を果していることを明らかにした。
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